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『マシュマロ・テスト:成功する子・しない子』

心理学者、ウォルター・ミシェルさんの50年にわたる自制研究の集大成。心理学の予備知識が不要である。

マシュマロ・テストとは

マシュマロ・テストの発端は、1960年代にスタンフォード大学のビング保育園でおこなった実験だ。

子供は1人でテーブルにすわる。目の前にあるマシュマロが置いてある。すぐに食べたければ、テーブルのベルを鳴らすと研究者が戻り、すぐにマシュマロを食べることができる。この場合は、1つしかもらえない。しかし、最長20分、1人で待てた場合は2つもらうことができる。

この実験が有名になったのは、この実験をうけた人の追加調査の結果である。

待てる秒数が長い子供ほど、大学進学適性試験の点数がよく、肥満指数が低く、自尊心が強く、目標を効果的に追求し、欲求不満やストレスに対処できたという。中年期になると、長く待てた人と待てなかった人では、脳スキャン画像ではっきり違いがみられたという。

つまり、保育園時代にうけたマシュマロテストの実験と、その後の人生の成功には相関関係があった。

この実験は、2006年にニューヨーク・タイムズの社説でとりあげられ有名になった。『ファスト&スロー』、『いつも「時間がない」あなたに:欠乏の行動経済学』でも、このマシュマロ・テストが紹介されている。

自制スキルはもともと遺伝的な能力なのか、それとも訓練しだいで身に付くことができるのか

問題は、この自制スキルはもともと遺伝的な能力なのか、それとも訓練しだいで身に付くことができるのかという問題である。
ウォルター・ミシェルさんの見解は、訓練で自制スキルがみにつくという立場だ。

実際に、自制できるようにする戦略が紹介されている。

例えば、こころの中で額縁をつくり、その中にマシュマロがあるようにイメージすることで、マシュマロが写真のように感じ、刺激の影響が冷却され、倍の時間を待てるそうである。またマシュマロが丸くふっくらとした雲だとイメージさせると、同様の結果になった。

タバコの例もおもしろい。

タバコをみたら、嫌な匂いを思い出したり、喫煙の長期的な結果を強くイメージして、誘惑を冷却させるそうである。逆に、今の気分が良くなりそうに意識を集中させると、タバコの渇望に逆らえないそうである。

イフ・ゼン実行プランで自制スキルをみにつける

ピエロのおもちゃが、子供を誘惑して勉強の邪魔をするという実験もおもしろい。

この場合も、もしピエロが「いっしょに遊ぼう」といったら、「だめ。仕事をしているんだから」と答えるように事前に練習しておく。そうすると、誘惑を冷却することができる。

これはイフ・ゼン実行プランという手法で、学生が勉強するのを助けたり、ダイエット中の人がスナックを我慢しやすくしたりするそうだ。

ニューイングランドのウェディコでの子供たちの合宿を観察した結果も興味深い。

子供たちが、どういう条件で、攻撃的になるかを観察したものだ。人によって攻撃的になる条件はことなった。アンソニーという子供は、子供同士の接近や子供によるからかいでは、攻撃を示すが、大人による賞賛や警告には攻撃がでなかった。

つまり、いつも攻撃的な子供ではなく、攻撃的になる条件には固定のパターンがみられたのだ。

自制がある人は、どんな状況でも自制がきくとは限らないそうである。

誠実な人が、一貫して誠実とは限らない。

衝動的な反応のきっかけとなる条件を探すことが大事だという。条件を知っておくと、事前に冷却用のイフ・ゼン実行プランを用意しておき、このプランを練習することで、自分の行動をコントロールできるそうである。

ホットシステムを利用せよ

脳には、ホットシステムとクールシステムが共存しているという。

ホットシステムは速く、自動、無意識で動く。現在志向が強く、誘惑に弱い。
クールシステムは、人類の進化の後期に発達したもの。反応はゆっくり。思考、行動、情動を調整する

このあたりは名著『スロー&ファスト』と同様の解説だ。

誘惑に勝つには、クールシステムだけで我慢するのはなく、ホットシステムも利用する。

年金の積み立てをどのくらいに設定するかという実験で、現在の自分の顔写真をみせたグループと、CG処理をして、自分の老いた顔写真をみせたグループとでは、積立金が30%ほど高かったそうだ。

遠い将来の自分のことを、加熱させることで、ホットシステムに働きかけ、結果として、正しい選択ができるようになる例だ。

筆者は、家でまったく勉強できないという悩みをもっている。もう子供の頃からの悩みで、家では無理なんだとあきらめていた。
自習室を借りたり、カフェにいったりして、いままでごまかしてきた。

なんとか、イフ・ゼン実行プランを考えて、家で勉強ができるように訓練したい。
また、居酒屋にいく回数も減らしたい。

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