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『超予測力:不確実な時代の先を読む10カ条』

超予測力:不確実な時代の先を読む10カ条』の原題は『Superforecasting: The Art and Science of Prediction』(Philip E. Tetlock著、Dan Gardner著、Broadway Books、2016)。

超予測力は存在するという著者の主張に引き込まれる。実験例やユーモアのある文章にひきこまれ、ミステリー小説を読んでいるかのようだ。著者の用意周到な主張にぞくぞくする。第10章「リーダーのジレンマ」は章自体にトリックが仕掛けられている。

著者のフィリップ・E・テトロックは心理学者。かつて専門家の予測の正確さは、チンパンジーがダーツを投げるのと変わらないという衝撃の研究で有名になった人である。

ただこの研究は、「すべての予測は不可能だ」「専門家の予測はすべて無益」という極端なメッセージにかわってしまったという。予測は可能か不可能かという二項対立ではないという

実際に私たちの生活は予測可能な部分と不可能な部分な共存している。たとえば保険会社は確率を使い予測をして、保険料を決定している。もし予測しなければ潰れてしまうだろう。

フィリップ・E・テトロックは2011年に「優れた判断力プロジェクト」をたちあげる。2万人以上のボランティアを集め政治、経済、金融について予測をしてもらった。

この実験は4年間にわたり、500の問いがだされ、1ヶ月以上1年未満先の予測をする問題だった。

この研究でわかったのは3ヶ月から1年半くらいの判断であれば、予測能力をもっている人がいるということだった。また重要なのは予測能力は、生まれつきの資質ではなく、どう考えるかにあるという。

フィリップ・E・テトロックの議論相手が認知心理学者のダニエル・カーネマンだった。

第11章で著者のフィリップ・E・テトロックの親友であるダニエル・カーネマンとナシーム・ニコラス・タレブとの応酬がでてくる。二人とも著者の予測力は存在するという立場に否定的である。

ある超予測者のグループにあるアサド政権が今後3ヶ月以内に崩壊する可能性をきく、また別な超予測者のグループには同じく6ヶ月以内に崩壊する可能性をきいた。また一般のグループにも同じ実験をおこなった。

カーネマンは、時間軸の違いによる確率を無視してしまい、どちらの期間でも回答はかわらないだろうと予測する。確かに一般のグループはカーネマンの言う通りで、3ヶ月後を予測したグループと6ヶ月を予測したグループの予測の確率はかわらなかった。

ところが超予測者のグループは、3ヶ月後の崩壊をきかれたグループは15%、6ヶ月後の崩壊をきかれたグループは24%と回答した。3ヶ月後と6ヶ月後を予測したグループは別である。両方の質問を聞かれた被験者はいない。この実験結果はカーネマンを驚かせる。超予測者は予測の時間軸を変えて検討するような思考法をおこない、確率の精度を高めるのだ。

「スコープ無反応性」と呼ばれる認知バイアスを示す有名なカーネマンの実験がある。

石油溜まりで溺死する渡り鳥は、毎年2,000羽いる。対策にいくら払うか、という質問をする。別なグループには同じく20,000羽、別なグループには200,000羽ときく。3つのグループの結果はどれも80ドル前後だったという。

カーネマンによれば被験者は心に浮かんだ渡り鳥のイメージに反応し、その感情の強さが金額になるという。実際に聞かれた金銭的評価という難しい質問でなく、答えやすい質問にすりかえてしまう。

超予測者は、内部のイメージにひっぱられず、確率の基準率を探そうとする

たとえば「レンゼッティ家はチェスナット通り84番地の小さな家に住んでいる。フランク・レンゼッティは44歳で、引越会社で経理の仕事をしている。妻のメアリーは35歳で保育園で働いている。二人には5歳になる息子のトミーがいる」というような具体的な情報を与えられ、ではレンゼッティ家がペットを飼っている可能性はどのくらいか

という質問をされた場合、超予測者が確認するのは、アメリカの家庭の何%がペットを飼っているかであるという。これは基準率といわれ、カーネマンは外側の視点となづけた。そこから内側の視点にはいり、家族の事情を検討して確率を調整する。

そのほか、超予測者の思考スタイル、予測方法を10の心得にまとめている。問題を回答可能な問題に分割する考えや、外側の視点の導入、証拠に対する過少反応と過剰反応を避けること、自らと対立する見解を考えることなどである。

本書の第5章から9章まで、じっくりと超予測者の思考スタイルを解説している。

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