DESIGNMAP

  1. TOP
  2. ブックレビュー
  3. 『やり抜く力——人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』

『やり抜く力——人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』

やり抜く力——人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』の原題は『Grit: The Power of Passion and Perseverance』(Angela Duckworth、2016)。

著者のアンジェラ・ダックワースは心理学者で、「成功の心理学」を研究している。マッキンゼー、数学教師を経て心理学者になった異色の経歴の持ち主でもある。

本書は前半の1章から5章までが、アンジェラ・ダックワースの主張の核心部分で、データによるエビデンス、理論がまとまっている。後半の6章以降は、インタビューを中心に具体的なグリット(やり抜く力)を伸ばす方法、教育方法がまとまっている。

筆者も含めて私たちは、天才や才能に対して憧れをもっている。
人を判断する際に、生まれ持った才能があるかないかを実は重視している。例えば、ある卓越したスポーツ選手をみると才能だと思い込んでしまう。

心理学者のチアユン・ツァイの研究が紹介される。人々は本音レベルでは努力より才能を重視していることがあきらかにした。

ある実験で、プロの音楽家に参加してもらい2名のピアニストの曲を聴いてもらう。実際には同じピアニストが、同じ曲の別の場所を録音したものだ。ピアニストを紹介する際に、片方は「才能豊かで、幼少時から天賦の才を示した」と紹介し、もう一人は「努力家で、幼少時から熱心に練習し、粘り強さを示した」と紹介する。曲を聴いたプロの音楽家は、天才型のピアニストのほうが、プロとして成功する確率が高いと評価した。

ところがこの参加者には事前に「成功するためには、才能と努力のどちらがより重要だと思いますか」という質問に対して、努力が重要と答えていたのだ。

チアユン・ツァイは、さらに追加の実験をおこなう。新米からベテランまで数百名の起業家を集め、無作為に2つのグループに分ける。

第一のグループの参加者には努力家タイプのプロフィールが紹介される、第二グループの参加者には天才タイプのプロフィールが紹介される。つぎに参加者は、事業計画のプレゼンテーションの録音を聞いた。実際には、同じプレゼンテーションの録音をきいている。ところが、参加者は天才タイプの方が、起業家として成功する確率が高く、事業内容も高評価をしたという。

アンジェラ・ダックワース自身、子どもの頃から父親からはお前には才能がないと言われて育ったという。人は、才能があるかどうかを重視し、才能の有無で人を裁こうとする。

私たちは能力に圧倒されると、才能がすごいと思ってしまうのだ。
社会学者のダニエル・F・チャンブリスの研究例とインタビューが紹介されている。
ダニエル・F・チャンブリスは競泳の選手を対象にした研究論文を書いている。ダニエル・F・チャンブリスは人間のどんなに大きな偉業も、実際は小さなことをたくさん積み重ねた結果であり、そのひとつひとつは当たり前のことばかりだという。

最高のパフォーマンスは、無数の小さなスキルや行動を積み重ねた結果として生み出される。それは本人が意識的に習得する数々のスキルや、試行錯誤するなかで見出した方法などが、周到な訓練によって叩き込まれ、習慣となり、やがて一体化したものなだ。やっていることの一つひとつには、特別なことや超人的なところはなにもないが、それらを継続的に正しく積み重ねていくことで生じる相乗効果によって、卓越したレベルに到達できる

そう言われてもすごいパフォーマンスをみてしまうと、人はその舞台裏のすさまじい訓練や試行錯誤の積み重ねを忘れてしまう。私たちは天才という神秘的なものに魅力を感じてしまうのだ。

米国陸軍士官学校の中退のエピソードがある。入学するには大学進学適正試験で高得点をあげ、高校の成績もよくないといけない。また体力測定のポイントや連邦議会議員などの推薦状も必要である。最終的に、優秀な1,200人が入学を許可される。入学をするのは、ほぼ例外なく各高校を代表するスポーツ選手で、大半はキャプテンを務めている優秀な人たちだ。

ところが、入学して5人に1人は、中退してしまう。しかも中退の大半は入学直後の7週間の基礎訓練で辞めてしまう。アンジェラ・ダックワースは大学院の博士課程のときに、どんな人ならこの訓練を耐え抜けるかというテーマで研究をはじめる。

米国陸軍士官学校は志願者総合評価スコアというのを算出していた。
これは大学進学適正試験のスコア、高校での成績順位、リーダーとしての素質の評価、体力評価のスコアをあわせた加重平均である。これは厳しい訓練に耐えられるかを予想するには役には立たなかった。総合評価スコアで高得点をあげた士官候補生と、最低スコアの士官候補生と同じくらい中退する確率が高かったのだ。

アンジェラ・ダックワースが米国陸軍士官学校の関係者にインタビューをする。浮かび上がった仮説は、重要なのは才能ではなく、「絶対にあきらめない」という姿勢だった。

ビジネスパーソン、アーティスト、アスリートにもインタビューしたところ、成功するには情熱と粘り強さが重要だという話をきいた。つまりグリット(やり抜く力)が強かったのだ。

そこでアンジェラ・ダックワースは、グリットを測定するためのテスト「グリッド・スケール」を開発する。
「興味の対象が毎年のように変わる」「私は挫折してもめげない。簡単にはあきらめない」「アイデアやプロジェクトに夢中になっても、すぐに興味を失ってしまったことがある」などの質問質問に5段階で回答していくと、自分のグリットスコアが算出できる。

米国陸軍士官学校の基礎訓練の2日目に、1218名の士官候補生にグリッド・スケールを実施した。結果は、グリッド・スケールの結果と総合評価スコアは関連がなかった。訓練を耐え抜いたものたちは、グリッド・スケールのスコアが高く、中退する人はグリッド・スケールのスコアが低かった。

アンジェラ・ダックワースは、営業職にもグリッド・スケールを実施した。この会社はリゾート会員権販売会社で、営業職数百人を対象にグリッド・スケールを実施した。半年後、すでに55%の人が辞めていた。ここでもグリッド・スケールのスコアとやめない人の間には相関関係があった。グリッド・スケールのスコアをみれば、生き残る人が予測できるという。

その他シカゴの公立高校やアメリカ人を対象とした大規模調査、グリーンベレーとの共同研究、スペリングの正確さを競う大会などでのグリッド・スケールの実施例が紹介される。すべて同様の結果だった。つまり、才能より、グリット(やり抜く力)が成功と関連していた。

アンジェラ・ダックワースはグリット(やり抜く力)は生まれ持ったものではなく、伸ばせる能力だと主張する。第6章から第9章でが、興味、練習方法、目的、希望という観点で、自分の内側からグリッドを伸ばすやり方をまとめている。

第10章から第12章は教育論になっていて、外側からグリットを育む方法がまとめられている。

スポンサーリンク

プロフィール

DESIGNMAP
制作ディレクター
ON VISITINGを運営。
お問い合わせ