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『なぜ、遊園地は子どもたちを魅きつけるのか?』

本書の第1部は昔の遊園地の誕生の経緯と現在を追っている。取り上げている遊園地がしぶい。横浜ドリームランド、向ヶ丘遊園、多摩川園、二子玉川園、行川アイランド、船橋ヘルス・センター、五島プラネタリウム、小山ゆうえんち等などである。

個人的に興味をひいたのは小山ゆうえんちの章である。筆者は近県に住んでいて、80年代に2回いったことがある。もう当時で遊園地の施設はくたびれていた。第2部「なぜ、老舗遊園地は消えたのか?」の分析によれば、73年のオイルショックから遊園地の不振は始まっていたという。

小山ゆうえんちの誕生が興味深い。1960年に林卯吉郎という人が個人で開園している。個人というのが珍しいケースである。通常、遊園地は鉄道会社、新聞社が開園するケースが多いからだ。たとえば、としまえんなら西武鉄道、カッパピアなら上信電鉄、向ヶ丘遊園は小田急電鉄である。東京ディズニーランドでさえ主要株主は京成電鉄である。

小山ゆうえんちの敷地は10万平方メートルで、ツツジ、バラ、アヤメなどが咲く大庭園であった。驚くことに園内にはモノレールがあったという。日本初の常設モノレールは1957年の上野動物園なので、当時としては先進的な施設である。

この林卯吉郎がどういう人なのかはまったくわからないという。過去に一度運営会社が倒産しているため、小山ゆうえんち内にもまったく資料が残っていない。著者は小山市史、小山商工会議所、小山市役所などにもあったたが、手がかりが見つからなかったそうだ。

その後の小山ゆうえんちは、ダイエーが経営再建にのりだしたり、2002年に温泉を掘ったりする。この温泉は成功し、豊島園や東京ドームといった遊園地併設型温泉施設のきっかけをつくった。最終的に2005年にヨークベニマルに売却し、歴史を閉じる。2007年にショッピングセンターにかわり現在に至っている。温泉施設は今も続いている。ショッピングセンターには今も、メリーゴーランドが残っていて、稼働している。このメリーゴーランドは2002年に横浜ドリームランドから移したものだった。

横浜ドリームランドのモノレール、向ヶ丘遊園の蕎麦屋、船橋ヘルス・センターの渋滞、浅草松屋の屋上にあったロープウェイなどのエピソードもおもしろい。

特に横浜ドリームランドの章は著者の気持ちが入っている。横浜ドリームランドの跡地は、いまは大学と公園になっており、創業者の松尾國三の思いがいまも生きている。

本書は2006年に『セピア色の遊園地』として刊行、その後2008年に『なぜ,子どもたちは遊園地に行かなくなったのか?』というタイトルで改訂版がでて、さらに2016年に本書が改訂版として刊行された。ロングセラーである。

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