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『たのしごとデザイン論』

アートディレクター・グラフィックデザイナーであるカイシトモヤさんのデザインや仕事に関するエッセー集。

大学や専門学校の1年生からすでに現場にはいっている人、デザイン思考を知りたいビジネスマンまでおすすめしたい。

読み進めていって何度も目からウロコが落ちる。
たとえば、ゾウのピクトグラムを作るときは、まず本物のゾウを観察することが大事だという。

抽象はぼんやりした、はっきりしないものではなくて、対象にあなたが立ち向かい、あなたの考えで抽出した姿を作る行為です。抽象化の訓練をすると、本質を抜き取るのが上手になります。これはデザインに限らずさまざまな場面でも有効な考え方で、ある問題から要点を抜き出したり、別の視点で置き換えて解決することができるようになります。

新人時代のエピソードが興味深い。2色刷りの社内向けニュースレターを作っていて、写真はモノクロだったという。地味な仕事だったが、工夫をくわえて写真をダブルトーン印刷にしたという。普通であれば、つまらない仕事として定型作業で終えたものである。自分なりにやり方を調べることで、小さな成長と改善ができた。

カイシさんは工夫を遊びという。

僕の考える「遊ぶ」とは、「仕事に没頭し、自発的に知識欲や好奇心、考える意欲を働かせる」ことを意味します。(中略)仕事に対して「遊び場」を作るということは、自分が考えて、成長するための、仕事の隙間に与えられた(もしくは努力して作る)ゆとりの部分ではないかと思います。

“一応”からの卒業。という節もハっとする。カメラマンやイラストレーターに一応これもこれもお願いします、と指示することの失礼さと説明不足を解説している。

“やりたい、からやるべき、へ”の節では、独立後、インディーのCDジャケットを手がけ実績をつくり、営業してメジャーのCDジャケットも手がけるようになったエピソードが紹介されている。当時、インディーのCDジャケットは粗悪なデザインしかなく、予算も安かったという。カイシさんは誰もやらないからこそ、踏み込んで開拓していく。

前著の『How to Design いちばん面白いデザインの教科書』はデザイン理論や作ることに焦点をあてていた。本書は作る土壌づくり、仕事のコンテクストづくりに焦点を当てている。

デザインや仕事のヒントが満載で名言の宝箱である。これだけ充実した内容で本体価格1,600円は安すぎる。

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