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『水の継承者 ノリア』

近未来で水が不足し、軍が支配している村が物語の舞台である。
世界は残された資源をとりあって戦争がおこる。その後“灰色の時代”が訪れ、あらゆる資源や技術が失われてしまう。

主人公のノリアは、子供の頃から茶人である父親から茶人なるための修行を続けている。茶人は先祖代々秘密の泉の水量を守る使命をもっている。

村の人々はわずかな水を配給で生活している。髪を洗うときも水は使えない。それでも水が足りなく、違法に水道管をひこうとする人もいる。これは違反行為で見つかると軍に監視され、処刑されてしまう。ノリアの家は巧妙な仕組みで秘密の泉につながっている。

新しく権力者になった軍のタロ中佐はなぜか茶人の秘密を知っていて、ノリアの家に迫っていく。
タロ中佐により軍の調査がはいり、ノリアの庭は掘り起こされ、貴重な素材を使った茶室は壊され、祖先の茶人の書は没収される。

ノリアは親友のサンヤの家族を助けるために、サンヤに泉の秘密を打ち明ける。その後、ある村人に見つかり、泉は村全体の秘密となる。ノリアの家には、水を求めに村人が訪問するようになる。

ノリアは茶の道を捨てて、生き残る機会は2回あった。ひとつは研究者の母親についていって、都市部に逃げること、もうひとつはタロの取引に応じて軍と癒着する道を選ぶこと。ノリアはどちらの機会も捨てて、茶の道に全うすることを選択する。

タロは最後に本心の質問をノリアにする。

「なぜだ?正しいと思うことをすれば、生まれ変わったときに、あるいは死後の世界で報われる何かがあると信じているのか?」
「いいえ。私が信じているのは、報いなどないと知っていたとしても、難しい選択を毎日していかなければならないとということです」
「なぜだ?」
「なぜなら、この道しかないからです。それが自分の人生に、意味を残していく唯一の方法だからです」

物語の終盤でノリアは絶望を前にして、怒りと自暴自棄におちいる。しかし、言葉を紡ぎ、未来に託そうとする。そして時代を超えて生きつづける水を思い、自由の感覚をとりもどす。

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