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『本屋、はじめました ― 新刊書店Title開業の記録』

東京の荻窪に2016年1月にTitleという本屋さんがオープンした。荻窪駅の北口をでて青梅街道を青梅方面に12分ほど歩いたところである。個人が新刊書店を開業するというのは珍しい。

本書は店主の辻山さんの学生時代、書店員時代、開業前、開業後の1年間を綴ったエッセーである。

辻山さんは学校を卒業後、書店チェーンのリブロに入社する。
当時は1店舗あたりの社員数が多く、まだ余裕があった時代だった。

福岡の久留米店に配属になった時、休みの日は九州全域をまわりその土地の本屋さんを回る。

その後広島店で店長になり、Titleの原型ともいえる売場作りをはじめる。本を大まかな分類でくくり、ハードカバー、文庫を問わず内容にあわせておいていく。文庫はいったんすべて返品して、全商品の一覧を小さな出版社までとりよせて、セレクトしていく。広島の本屋さん「READAN DEAT」をはじめた清政さんは当時のリブロ広島店の影響をうけて自分で本屋を開業した方である。

その後、名古屋店の店長になり、地域の本屋さんと共同のブックイベント「BOOKMARK NAGOYA」を仕掛けていく。そして統括マネージャーとして池袋店へ。池袋店では「cartographia」というジャンル横断の棚を設けて、若手思想家を呼んでブックフェアやトークイベントをおこなう。

池袋店の閉店を見届け独立へ。

本書を読んでいくと、カバー、什器、内装、品揃、お店の空気にいたるまで、辻山さんの様々な記憶や経験がTitleという本屋さんにつながっていったことがわかる。

通常の新刊書店の場合、問屋さんから自動で売れ筋の本が送られてくる発注方法(パターン配本)を採用しているが、Titleでは、可能な限り出版社から新刊リストを入手して、Titleにあっているかを判断して自分達から発注している。セレクトショップのような厳選さではなく、問屋まかせに売れ筋上位だけを並べた本屋でもない。

あえて普通の本をショーウインドウに置いて、地域に開いている。

本書を読んで驚くのは問屋との取引などの条件の数字を開示している点である。巻末には事業計画書と営業成績表があり、開業費用から粗利、家賃、自分たちの給料までも公開している。事業計画書は問屋と口座を開設するとき、お店の物件を借りるときに力を発揮している。

単なるエッセーではない。本気で後に続く人へ思いを渡す本になっている。
これから書店を開きたい人、夢を実現させたい人に長く読み継がれる本になるだろう。


リブロ浅草店で購入しました。

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