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『まっ直ぐに本を売る ― ラディカルな出版「直取引」の方法』

トランスビューは出版社で、2001年に創業し2016年4月までに140点を刊行している。
出版業界の慣例を打ち破る販売・流通方式を実践していることでも知られている。

本書はそのトランスビュー方式を詳細に取材してオープンにした本である。出版社、問屋、本屋にも取材し、それぞれの立場からトランスビュー方式をどうみているかをきき、出版業界が抱える課題を浮き彫りにする。

著者の石橋毅史さんは、出版社の営業職を経て、出版業界紙の記者になり、編集長を経て現在はフリーランスライターとして活動されている。

本が本屋まで流通するには2つのルートがある。

ひとつは問屋を通して、全国の本屋に配る方法である。
問屋は本屋のランクごとに本の配布を自動で決めて送る。書店側は発注する手間が不要である。自動で配布された本を並べて、不要な本を返品する。本によっては並べられることもなく、すぐに返品される本もある。他にも書店側が出版社にタイトルと数を発注して、問屋ルートで送ってもらうこともできる。

出版社側は問屋に本を渡せば、全国の本屋さんに配布してくれる。保管、流通、返品、集金などの作業を代行してくれる。

もうひとつは、出版社と本屋が直接取引きをする方法である。
この場合、本屋が出版社に直接注文をして、出版社は直接本をおくる。シンプルだが、営業・流通・決済を自分でやらないといけない。当然ながら直取引の場合、本屋は発注する必要がある。

トランスビューは本屋と直接取引きをしている。
しかも2〜3人という規模で実現させている。

トランスビュー方式を詳細に解説

本書ではトランスビューが契約している流通センターから、段ボールのサイズ、はさみのサイズ、梱包材のコスト、送料、本屋とかわす契約書、掛け率や返品などの条件などをすべて公開している。

さらに本屋から受注した後の具体的な事務作業を公開。
トランスビューは特別に凄いことをやっているのではなく、細かい作業の積み重ねであることがわかる。

本を送る時の送料はトランスビューが負担して、返品するときは本屋が負担する。本屋から18:00までに注文があった場合、その日のうちに発送する。

トランスビュー方式では本を押し込むような営業はしない、あくまで本屋の自主性にまかせ、注文がきたらその数だけを早く送るシステムである。

トランスビュー方式の特徴は返品率の低さである。業界では返品率は40%である。出版社側はそれをみこして、毎月本を刊行して、問屋側に送り込み資金繰りをする。大手出版社だと、問屋に本を預ければ翌月にお金が振り込まれる。一方、本屋側も返品することで資金繰りをする。

トランスビュー方式だと10%台に下がる。本を無理に送り込まず、本屋側から自主的に発注した数だけを送るからである。

書店の粗利を増やしたいという想い

トランスビュー方式の根本にあるのは本屋の粗利を増やしたいという想いである。

通常、問屋から仕入れる本は掛け率は78%くらいである。粗利が22%しかないのである。そこから家賃、人件費、光熱費をひくとほとんど利益が残らない。余裕がなく、経営は厳しい。

トランスビュー方式では本屋には定価の70%で卸している。2007年からは68%にさげた。粗利が30%になると、本屋側に余裕がうまれる。

トランスビュー方式を広げるために2013年からは取引代行業サービスをはじめた。
トランスビュー方式を他社の本にも開いた。

参加している出版社は50社ほどまで広がっている。
小さな出版社の場合、問屋ルートを使うにも取引きを断られたり、不利な条件を強いられる。直取りルートをするにも、編集者一人で起業した場合、営業・事務・発送作業をする余裕がない。

本書では「ころから」という出版社を起業した木瀬さんへのインタビューがのっている。大手の問屋からは門前払い、中堅の問屋からは不利な条件をつきつけられる。そこで書店での直取りを考えて、トランスビューの工藤さんに相談する。結果的に取引代行業サービスの契約を結んだ最初の出版社になった。

参加している出版社はトランスビューに一括で本をおくれば、保管、受注、発送、集金、返品を代行してくれる。この場合も販売元はあくまで出版社である。本書ではこの取引代行業サービスの手数料やメリット、デメリットまでも詳細に公開している。

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