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『本屋がなくなったら、困るじゃないか 11時間ぐびぐび会議』

本屋・取次(本の問屋さん)・出版社12人が一同に集まり輪になって議論をした座談会をまとめた本。お互いの仕事の仕組み・考え方の違いからスタートし、構造的な問題を11時間の議論であぶりだしていく。

取次が担う公共性な役割という話が興味深い。
取次は単に本の問屋さんではないのだ。

取次は仕入れを絞り、売れるものだけを選ぶことができないという。ある大手取次が仕入れを絞ったら出版社から批判されたという。

取次は黙っているのが美徳という意識があり、出版流通を担う公共的な役割を背負っている。

トランスビューの工藤さんは取次は扱うのを拒否するのではなく、見計らい配本(取次が書店に対して、販売実績に応じて適当とおもわれる銘柄と冊数をきめて送るシステム)をやめて、そのかわり出版社が書店から集めた注文の数を受け入れるように提案している。

同じく工藤さんが取次が抱える逆ザヤ問題に触れている。
大手や老舗出版社の場合、取次への掛け率が高く、大手書店に卸した場合、マイナスになってしまうという。ここ数年で取次の破綻が相次いでいるがこの問題が関係している。

文化通信社の星野さんによれば、取次のシステムは書籍だけでは赤字だという。いままでは流通効率の良い雑誌の売り上げでカバーしてきたという。

星野さんは本書でドイツの本業界の話をしている。ドイツの本業界は厳しい未来予測を立てて、業界がまとまり構造改革をしている。Amazonに対抗するシステムをつくっている。ドイツの場合、書店の粗利は直取りで40%、取次経由でも35%だという。このドイツモデルの話だけでも一読の価値がある。

書店側の話では、昔は本屋は兼業が多く、町の御用聞きのような存在だったという話に驚いた。
薬やクリーニングと兼業するパターンもあったという。

広島でウィー東城店を経営する佐藤さんの取り組みが紹介されている。例えば年賀状の素材集を売るだけでなく、印刷の代行までを請けているという。店内は本だけでなく、化粧品、美容室、カフェを併設している。お客さんの要望を聞いているうちに事業の幅が広がっていったという。

佐藤さんは自分がやっていることの方向性に迷いがあったという。和歌山のイハラ・ハートショップを営む井原さんの話をきいて共感して涙を流したという。

イハラ・ハートショップは着飾らずに普段着で行き、アイス一個を買えるようなお店である。
心のオアシスのような存在である。

雑貨やカフェを併設する書店が増えているが、これは原点回帰ともいえるのだ。

本書の第1部と第2部はこの座談会をまとめた構成。第3部はトランスビューの工藤さん、文化通信の星野さん、H.A.Bookstoreの松井さん、ツバメ出版流通の川人さん、ミシマ社の三島さん、長崎書店の長崎さん、カモシカ書店の岩尾さんのインタビューが収められている。

相当なボリュームで読み応えのある一冊。

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